美容師法の改正と、眉業界の現在地

――「無知」から始まった眉協会代表が、今思うこと


高市総理が、出張理容・美容に関する規制緩和について言及しました。

これまで認められてきた出張施術の対象は、病気・障害・認知症・寝たきりなど、来所が物理的に困難な方に限られていました。今回の通知では、勤務環境上、営業時間内に外出することが難しい方や、育児・介護と仕事を兼ねる方、演劇やテレビ出演者への直前施術なども、対象として明文化されました。

「小さな一歩」ではあります。それでも、現場に近いところから変化が起きていると感じました。


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私自身の話から始めさせてください

私はヨーロッパのメイクスクールで学び、この業界に入りました。
当時、メイクの仕事に美容師免許が必要だという事実さえ、知りませんでした。

その後、イギリスで眉毛エクステの技術を習得し、日本で施術を始めると「教えてほしい」という声が全国から届きました。
修了証を発行するなら、個人名よりも株式会社よりも、「一般社団法人」の方が信頼されるし、受講生の方も喜んでくれるだろう。
それだけの理由で、2015年に協会を設立しました。

法人化の重さも、かかるコストも、リスクも、深く考えていませんでした。今振り返れば、完全に無知ゆえの選択です。

それが、”一般社団法人の眉毛協会”という社会的なイメージで信頼を得て、様々な媒体や機関から取材や意見を求められるようになりました。

私は、自分の無知な選択の結果を滑稽だと思いながらも要望に応えるべく、必死に勉強しました。

実際に、様々な公的機関に眉について問い合わせても、自分よりも詳しく答えられる人がおらず、逆に質問される状態。

きっかけは何にせよ、どんな人でも狂気的な勉強と費やした時間によって人は何にでもなれるのだと身をもって体験しました。

その激動の日々の中で、多くの問い合わせを受ける中、「眉の施術には美容師免許が必要です」と答えながら、自分がそれを持っていないことへの後ろめたさに耐えられなくなり、通信講座で3年かけて美容師免許を自ら取得しました。

因みに、教える側に美容師免許は不要なので、講師の私は免許を持たなくても違法ではありませんでしたが、ぽっと出の眉協会を妬む人、美容師免許持ってないのに、と攻撃的な受講生の方がいたことも、取得した理由の一つです。

勉強になったことは多くありました。
ただ、実技試験のオールウェーブとカットは、眉・メイクの仕事において、今後一生使う場面がない技術でした。

専門学校で出会った人の中には、ヘアメイクの講師、芸能人のヘアメイク、夫の美容院のアシスタントを長年している人など、私と同じように技術はあるが資格を持たない人がたくさんいました。


免許制度と、現場のズレ

この経験から、ひとつ率直に申し上げたいことがあります。

メイク・まつ毛・眉の仕事を目指す方が、現場で使わない実技試験のために膨大な時間とお金を費やす現状は、合理的とは言えません。

韓国では、美容師免許にあたる資格が細分化されており、メイクやまつ毛など分野ごとに個別取得が必要です。以前、韓国の美容業界の方に「日本は美容師免許さえあれば全部できるんだから楽ですよね」と言われたことがあります。確かにそういう見方もあります。

ただ逆に言えば、日本の制度は「何でも一括」であるがゆえに、専門性の担保が曖昧になっている面もあります。


法整備には、慎重でありたい

数年前、国から委託されたリサーチ会社のインタビューに協力した際、「眉業界の発展のために、法整備や基準の一本化は必要だと思いますか?」と問われました。

「それは利権争いになるだけだと思います」と、率直にお答えしました。

今も考えは変わっていません。

現在、「眉・協会」で検索すると、一般社団法人の協会が数多くヒットします。もしそのどこかが業界の主導権を握り、国のお墨付きを得れば、利益と影響力を長期にわたって掌握できます。法整備や資格の一本化は、聞こえはよいものです。しかし特定の団体の覇権争いに終わるリスクと、常に表裏一体です。

もし制度を変えるなら、特定の企業や団体との癒着なく、現代の業態に即した公平な内容であることが絶対条件だと思っています。


正しさより、トレンドが勝つ時代に

美容業界には「トレンド→ブーム→終了」というサイクルがあります。SNSの登場でその速度は格段に上がりました。

整形や痩せ薬までもがこの流れに乗り、健康という「正しさ」より、見た目という「トレンド」が優先される世の中になっています。

消費者の選択はその方の自由です。

しかし、施術者や提供側がビジネスのために正しさを無視し始めたとき、業界は静かに信頼を失っていきます。

消費者には、良い施術者を見極める目がこれまで以上に必要になります。

そして業界側には、トレンドに流されない軸を持ち続ける責任があります。


私は昨年、東京から地方に移住し、図書館に通いながら改めて勉強する日々を送っています。

眉に関してはやり尽くした、もう十分だと思っていました。

それでも、学び直す中で「もう一度、目の前の人に役立つものを作れる」と感じました。

その思いから今、アイブロウマイスターのテキストを新たに作り直しています。

美容師法と眉の施術、眉用薬剤については、今年改めて厚生労働省に確認した内容も盛り込む予定です。

過去にご受講いただいた方には、割引価格でご提供できるよう準備を進めています。

眉業界の発展などと大きなことは言えません。

ただ、できることを、できる範囲でやります。


「貧乏とは少ししかものを持っていない人ではなく、いくらあっても満足しない人のこと」by 故ホセ・ムヒカ大統領

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著者

NY州立大学卒業後、アパレル・企業広報・IT翻訳・人材派遣営業職など様々な職業を経てロンドン、パリのメイクアップスクールに留学。
日本の眉毛エクステの第一人者として、NHK, AbemaTVなどメディア出演多数。
世界初の眉毛エクステ専用コスメEVOKE BROWSはじめ、眉毛エクステ専用商材を国産化粧品として開発。
眉のアドバイザー資格アイブロウマイスター監修、つけ眉毛技術W BROW/ノンケミカルブロウラミネーション技術発明。
メイクアップアーティストとして化粧品開発事業も行う。
美容師免許、調理師免許保有。
サイアートパーソナルカラーアナリスト。

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