講習では時々オリジナル商品開発について質問をされるので今回は
“オリジナル化粧品を作りたい”
人に向けて私の経験を紹介します。
法人化して6年、出資者もおらず、融資もなく(性格的に借金が絶対にイヤ)全て私費で経営をしてきた。
一部の起業家からすると、自分のお金を使わずに起業(経営)するのがホンモノだ、という人もいるので、私のやり方には賛否あると思うが、100%自分のお金だからこそ、その大切さ、遣い方については常に切実だった。
元々”起業したい”とか”オリジナルブランドを作りたい!”と思っていたのではなく、仕事をしていく上で、
こういう商品が必要なのにない→ 困る → 作るしかない
こんなサイクルで必要に迫られて商品開発をしてきた。
当然ながら、商品を作るにはそれ相当の発注数が必要で、売れる保証などどこにもない。
できれば作りたくないのが本音だった。
在庫は経費にならない
ここで経理のミニ知識。
経営は、①売り上げー②経費=③利益で成り立つ。
③利益から算出された税金が徴収される。
例えば①売上は1,000万円、商品を仕入れるために使った②経費1,000万円の場合は、③利益は0(ゼロ)。
と思うでしょう?
私もそう思っていた。
実際には②1,000万円は経費にならず、逆に売上の素として仕入れた在庫は資産になってしまう。
これ、分かりますか?
手元にお金はないのに、1,000万円利益が出た事になる。
現金ゼロなのに!ですよ。
もう私、最初はちんぷんかんぷんでした。
なんでこんなにお金がないんだ、お金ないのになんでこんなに税金払うんだ、と。
世の中の商品を作っている全ての人を尊敬しました。
お金は遣い方の方が難しい
話を戻すと、私がこの数年で学んだのは、お金を稼ぐことより遣い方が大切だということ。
母の教育のおかげで、分不相応な生活や高額な物を欲しいと思う性格ではないため、これまでも無駄遣いはしてこなかった。
そんな私でも、起業してからは1円の遣い方でさえ考えて考えて考えて遣う。
節約というのはちょっと違う。
例えば、そのクオリティが後々まで影響したり、時間や効率に関わるものだったら高くても悩まず買うが、それらに影響しないのであれば絶対にお金を遣わない。
その金額に見合う価値があるかどうかに対してとても敏感になった。
自分がこれほどお金を遣う行為を真剣に考えるからこそ、講習に来てくれたり、商品を買ってくださるお客様への感謝の気持ちは昔とは比べ物にならないほど強くなった。
講習費用についても、内容と付属する商材を見て、「安い」と言ってくれる人が多い。
例えば先日発売したフェイシャルワックス動画講座は、22,000円だが、サロンでお客様に施術する場合、1回10,000円で提供しているサロンも多い。お客様二人で元が取れる計算だ。5,000円で提供したとしても4人でペイできる。
もちろん動画を見たからと言って自動的に技術が身につくものではないけれど、大切なお金と時間を使って選んでくださる人に絶対に損はさせない!という考えを基準に料金を決めている。
商品も技術も情報も、自分が買う側の立場になったとき、必ず納得できるクオリティものしか出さない。
なので、人任せにするのではなく商品も講座も動画も全て自分で作っている(めちゃくちゃ大変)。
結局、お金・・・でも
商品開発で言うと、W BROWグルーはまさに最大の金欠時に作ったもの。
眉毛エクステを皮膚に直接装着するには、グルーの安全性が必要不可欠で、何がなんでも化粧水や保湿クリームと同じ”化粧品”として接着剤を作ることが当時の大きな目標だった。
当時は眉毛エクステ関連の商品をいくつか作ったが、売れ行きは悪かった。
会社の経理上、在庫という資産はあるのに現金は底をつき、自分の貯金を会社の口座に入れ込んで生きながらえていた。
それでもW BROWグルーを作っちゃう自分も変わってると今は思うが、どん底でも安全な接着化粧品は私にとって絶対に成し遂げなければいけないことだった。
お金がないと、容器もデザインも希望のものなんて作れない。
通常商品を作る時は容器手配はもちろん、パッケージやデザインまで一括で依頼するのが基本だが、その予算がなかった。製造・梱包など基本的なことから、全ての工程を別の会社に個別に依頼することになった。自分で容器会社を探して数量や金額を交渉、それぞれの納期や配送先なども全て自分で調整した。デザインは過去の商品を担当していただいた会社に直接依頼した。
昔商品を作ったときは容器もデザインも自分の好きな物を選べたが、今は違う。
印刷のカラー1色ごとに、印刷の方法によって、紙の厚さ、一つ一つの選択が料金を大きく変える以上、希望なんて言ってられない。
お恥ずかしながら・・・と予算が本当にないことを伝えた。
断られても仕方がないと覚悟していたが、なんとかできる範囲で、と作ってくれたのがW BROWのパッケージだった。
シンプルだけど、こちらの意を汲んで商品を引き立たせてくれるプロ仕様のデザインに仕上げてくださったことに涙が出た。
ご覧のとおり、本体の方にはビニールもシールもつけることができなかった。
それでも、当時の精一杯の商品であり、担当してくれた皆さんへの感謝の想いが重なってとても気に入っている。
その後、眉毛エクステは下火となり、また、いくら安全でも最大の懸案事項であった持続性は結局、既存のものと変わらなかった。
お金もなくなり、取引先の人にも無理をさせ、ただ在庫を抱えることになってしまったな、と思っていた矢先、ブロウラミネーションのアイディアを思いついた。
この技法も”安全”を最優先に、日本の薬機法も確認しながら試行錯誤する中、あれ?使えるかも!と閃いたのがこのW BROWグルーを使用する方法だった。
ノンケミカル・ブロウラミネーション技術の人気と共にW BROWグルーは完売。
追加生産をすることになり、先ほど新しいパッケージの見本が届いた。
当時は手が出なかった厚手の光沢紙、本体にもラベルをつけることができた。
当然全て同じ会社に依頼してのことだが、困っている時に助けてくれた会社に、今度は多少は良い条件で再び発注できたことが何よりも嬉しい。
売れる商品とは
宣伝費ゼロ、高価なパッケージでもないのに商品がヒットした。
その要因を分析してみた。
- 無いものを作った
- 安全性に拘った
- その商品を使用する必要性をつくった
眉毛専用接着化粧品は既製品では存在せず(似たようなものはあっても使用感がまるで違う)、②の安全性は結果として使用法の制限がなく、使い勝手が良かった。
そして最大の要因が③だ。
ノンケミカル・ブロウラミネーション技術を開発したことでこのW BROWグルーを使う必要性ができた。
並べてみると、売れる商品なんて簡単に作れるものではないのが分かると思う。
私自身狙ったわけではなく、結果から推測しているに過ぎない。
自分がどれだけ拘ったり思い入れがあっても欲しい人がいなければ売れない。
コロナでマスクが売れたように、結局人が物を買う最大の理由は必要性だ。
作るだけで満足な人は別として、売れる商品を作りたいのだったら、自分の作りたい商品が最低限上記3つの条件を満たしているかどうかを考えると参考になると思う。
お金の計算も忘れずに。